伯母

先週、突然、伯母が亡くなった。腰が曲がってひどく痛むらしく、ときどき入退院を繰り返しており、動くのがつらい、ということは間接的に聞いていたのだけど、亡くなるような兆候は何も聞いて無かったので驚いた。伯父や従兄が夕食の準備などのため2時間ほど目を離していた間に倒れ、すぐに救急車を呼んだもののその場で死亡と確認されたらしい。

伯母はこのところ物忘れがひどく、忘れたことすら覚えていないので、物を盗られたなどと思い込むことが頻繁にあったようだ。そしてそれは、いつも伯父のせいということにされていたらしい。そのようなことが(おそらく毎日)続いていても、伯父は伯母と一緒にいた。嫌になった日も当然あっただろうけど、とくかくずっと一緒にいた。どうにもならなくなったのか、数年前、伯父はうちの母に、話を聞いてやってくれと助けを求めてきた。どうせ自分の悪口を言うのだろうから気が済むまで聞いてくれ、と。邪魔だろうから自分は外で時間をつぶしてくるから、と言って、しばらくしたら静かに外出したのだそうだ。

そのことを母から聞いたとき、素直に、伯父さんはすごいなと思った。いくら兄妹とはいえ、母に対して体裁を取り繕うこともせず、伯母の言うことを特に否定するでもなく、とにかくそのまま、気の済むまで話を聞いてやってほしいと言って外へ出たのだ。話を聞いているうちに、伯母は、ずいぶん落ち着いてきたそうだ。

そのようなことが、ボクに見えないところで、つい先日までずっと続いていた。初めのうちは、買物を伯父が、料理を伯母がしていたらしいのだが、最近では料理も伯父がやっていたみたいだ。伯父と伯母は恋愛結婚だったと聞いている。それにしても、もしボクがその立場に置かれたら、伯父のように、最後までその人と一緒にいてあげることができるだろうか。

告別式で、従姉が泣きそうな声で「お母さん!」と一度、強く叫んでいた。いちばん年長の伯母は消えそうな悲しい声で「K子さん、さようなら、さようなら」。「まさか死んじゃうとはなぁ」と小さく伯父がつぶやく。

伯母の柩を運んだ。とても軽くなっていた。


この1枚しか撮れなかった。写真としてはダメダメだ。